内臓脂肪が落ちやすい体質になるには?

日本人の弱点である「内臓脂肪」を落とすには、脂肪の摂取を制限する食生活と、有酸素運動を主体とした「運動」、この2つが欠かせない。前回は内臓脂肪の危険性を説明したが、今回は、より効果的に内臓脂肪を落とす運動のコツを紹介する。一般に「脂肪を燃焼させるには有酸素運動」というイメージがあるが、どんな運動をどのくらいすればいいのか、筋トレはどう取り入れればいいのか、具体的に記します。

〇内臓脂肪を落とすのに有効なのは「有酸素運動」

「日本人は内臓脂肪がつきやすい」という体質は変えようがない。だが、ついた内臓脂肪が燃焼しやすい体質になることは十分可能です。そして、それを実現してくれるのが運動なのです。

 では、効率よく内臓脂肪を落とすには、どんな運動がいいのだろうか。

 「内臓脂肪はお腹にたまるから、そこをダイレクトに鍛える腹筋運動(シットアップ)が有効では?」と思う人もいるかもしれない。だが腹筋運動も悪くはありませんが、実は腹筋運動で内臓脂肪を減らせる効果はわずかにすぎません。内臓脂肪がお腹につくからといって、腹筋運動だけに精を出すのはあまり意味がないのだという。

 内臓脂肪を減らす心強い味方、運動のポイントは下表の通りだ。順に説明していこう。

ご存じの方も多いと思うが、運動には大きく分けて有酸素運動と無酸素運動がある。有酸素運動とは、しっかり酸素を取り込みながら、一定時間続けて脂肪の燃焼を促す運動のこと。ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などが代表だ。一方、無酸素運動とは、逆に酸素を必要とせず、瞬間的に強い負荷をかけて行う筋力トレーニング(筋トレ)や短距離走のような運動を指す。

この2つの運動のうち、より内臓脂肪に効くのが有酸素運動だ。「運動が高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防・改善に役立つという研究は無数にあります。体を動かす習慣はぜひ実践していただきたいのですが、まず取り組んでいただきたいのが有酸素運動です」

 有酸素運動と無酸素運動を行った人を比較した報告によると、有酸素運動のほうが67%も多く内臓脂肪を落とす効果があったという。「息がはずむ程度の有酸素運動を1日30分、週5日以上続ければ、内臓脂肪が減ることも分かっています」

 1日30分、週5日の運動を続ければどれだけの効果があるか考えてみよう。ここで参考になるのが下の数式だ。

内臓脂肪1kg、腹囲1cmを減らすのに7000kcalのエネルギー消費が必要であるため、1日30分、週5日の有酸素運動で、内臓脂肪3.3kg、腹囲3.3cmを減らせる計算となる。

息がはずむ程度の有酸素運動というのは、ウォーキングであれば、かなりの速足で汗ばむくらいの速度だ。のんびり歩くのではなく、少し息が上がるけれど歩きながら会話できる程度の速さを想像していただきたい。

 これを30分、週5日実践するというのは、運動習慣がない人にとっては、意外とハードルが高い。そんな人は、「1日の歩数を今までより3000歩増やしてください。これを時間に換算すると、おおむね30分程度の歩行に相当します」

 つまり、息がはずむ程度の有酸素運動を30分できない日は、遠回りしたり、1駅分歩いたりして、3000歩を追加で歩けばいいというわけだ。「どちらかにこだわる必要はありません。大切なのは続けることです。柔軟に実施してください」

〇こま切れでもOK! 有酸素運動は血圧・血糖にもいい効果が

前述した息がはずむ程度の有酸素運動は、30分を『連続して』行わなくてもいい。「こま切れの運動でも、効果はあります。5分しか運動していなくても、脂肪は燃えるのです。こま切れで有酸素運動を実施しても、継続して実施しても、脂肪の消費はそれほど変わりません。ものを言うのは、有酸素運動の合計時間です。1日の運動がトータルで30分になるようにすれば、その日の有酸素運動をしたと考えて大丈夫です」。

 運動したいと思っても、平日は、仕事や家事、育児などで忙しく、運動する時間を確保するのが難しい人は少なくないだろう。そんな人は、例えば、7、8分の運動を4、5回に分けて実践するといった方法でもいいわけだ。

 これなら、朝夕、自宅から駅まで速足で歩く、駅から職場まで速足で歩く、地下鉄や職場、マンションなどで階段を使う、ランチは少し遠出して速足で歩くといった組み合わせでも十分に実現できる。わざわざジムに行ったり、ウォーキングに出かけたりする時間を作る必要はない。

 また、有酸素運動をすれば、血圧や血糖値を下げ、動脈硬化も改善する効果も期待できる。「高血圧、糖尿病、動脈硬化に関する専門学会は、いずれも有酸素運動が病気の予防、改善に役立つとしています。トライしない手はありません」。

 有酸素運動というと、ウォーキングを思い浮かべる人も多いと思うが、電車通勤を自転車通勤に変えるといった方法でも構わない。実際、担当した患者の中には、自転車通勤を始めて1年で13kgもの減量に成功した人がいる。

 「自転車で体を動かす効果に加えて、本人のモチベーションも影響したのでしょう。『これだけやっているのだから、ここでドカ食いしたら意味がない』と、不摂生にブレーキがかかりやすいのです。また、スマートフォンの歩数計アプリを活用するなど、努力が数字になって目に見えればモチベーションを維持しやすくなります」。

〇筋トレも取り入れるなら「有酸素運動の前」がベター

このように、内臓脂肪を落とすためにまず実践すべきは有酸素運動だが、「有酸素運動を主軸としながら、筋トレなどの無酸素運動も取り入れる」ことを推奨する。医学的に筋トレなどによって見逃せない効果がたくさんあるのである。

「筋トレなどを実践して筋肉をつければ基礎代謝は上がります。それは確かなのですが、筋肉が1kgついて増える代謝は、1日約20kcalほどで、キャラメル1個分しか代謝は上がりません。しかし、筋トレを実践すれば成長ホルモンの分泌量が増え、脂肪の燃焼効果が高まっていきます。さらに、血糖値をコントロールするホルモン、インスリンの効き目が良くなり、血糖値が上がりにくくなる作用も期待できます」

「有酸素運動と筋トレのどちらを先にするか。この順番は、内臓脂肪を落としたいのか、筋肉をつけたいのかによって違ってきます。内臓脂肪を落とすなら、筋トレを先にする『筋トレファースト』が効果的です。先に筋トレを10分間行って成長ホルモンをたくさん分泌しておけば、脂肪の燃焼効果が高まり、その後に行う有酸素運動の効果がいっそう促進されます。反対に、筋肉をつけたい人は、有酸素運動を先にするといいでしょう」

 なお、「有酸素運動と筋トレの両方は続けられない!」という人もいると思うが、基本は有酸素運動であることを忘れないでほしい。最初から、有酸素と筋トレの両方を頑張り過ぎると長続きしない。はじめのうちはハードルを下げて有酸素運動をメインにし、それが習慣になってから筋トレを追加するくらいに考えればいいだろう。

 

〇運動初心者にお勧めの運動は「ラジオ体操」

ここまでの説明で、有酸素運動を基本に、筋トレを組み合わせるのがベストなことはお分かりいただけたと思う。だが前述したように、運動習慣がない人は、スクワットや筋肉体操などを日々実行するのは少々ハードルが高いと感じるかもしれない。

 初心者でも手軽に始められて、かつ続けやすい運動メニューはないものか。「ラジオ体操なら運動初心者にも難なく、いつでもどこでも、誰でもできます」お勧めします。

確かにラジオ体操は、中高年齢層ならほとんどの人が知っているし、日々実践するのも難しくない。「ラジオ体操なんて単なる準備運動ではないか」「小学生の夏休みじゃあるまいし」などと軽視することなかれ。ラジオ体操は、有酸素運動と無酸素運動の両要素を併せ持つ、あなどれない運動なのだ。

 「ラジオ体操は子どもでも気軽にできる運動ですが、実は専門家の英知を結集して作られた、よく考えられた運動です。ラジオ体操は、有酸素運動を主体としながら無酸素運動も含み、さらにストレッチ要素も加わっています。特に『第2』は強めの運動が組み込まれているため、筋肉強化の効果も期待できます。第1と第2を1セットとして一日1セット行ってください」

〇何歳になっても、運動で内臓脂肪を落とすことは可能

読者の中には、「もうシニア世代に入っているので、今さら運動しても無理では?」と思う人もいるかもしれない。しかし、高齢になっても決して手遅れではなく、効果は十分に期待できる。

 「内臓脂肪の蓄積に筋肉減少が重なった『筋肉減少性肥満』になった人に、筋トレと有酸素運動を続けてもらった報告によると、90代の人でも効果が得られています。ポイントを押さえて生活を改善すれば、何歳になっても体は応えてくれるのです」

「運動習慣のない人は、脂肪を分解してエネルギーを取り出す力が強くないので、最初はあまり内臓脂肪が減らないことがあります。でも、有酸素運動を続ければ、脂肪が燃えやすい体質になってきます」。

 有酸素運動を2カ月、3カ月と続けると、脂肪が楽に燃えるようになってくる。ただし、ここで怖いのが、さぼった後のことだ。「2週間、運動をさぼると、脂肪の燃えやすさはふりだしに戻ると考えられています」。継続は力なり、といわれるが、それはまさに内臓脂肪に当てはまる言葉だ。少しずつのこま切れ運動でいいので、積み重ねることが重要なのだ。

 日本人が太るときは内臓脂肪からつくが、内臓脂肪は減らしやすい脂肪でもある――。この特性を生かし、努力すればきちんと応えてくれる、そんな内臓脂肪の裏切らない効果を体験してみましょう! 病気予防にもなるのです。

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